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彼女は俺の声にびっくりしたのか、定規を引っ込めてしゃがみ込んだ。
「美作さん、定規って思っているよりかなり痛いんだよ。わかる?」
彼女は首を横に静かに振り、定規を眺めながら『ごめんなさい』と言った。
「わかってくれたならいいよ。俺は大丈夫だし」
「あっ、いえ…先生じゃなくて定規に謝ったのです」
「ちょっと説教が必要かな」
俺が満面の笑みを浮かべて見つめると、彼女は瞳を潤ませながらまた頬っぺたを膨らませた。
「定規は私の宝物なのですよ」
「その宝物を凶器にしちゃダメでしょ。という訳でお仕置きね」
俺は彼女の顔を両手で包んだ。
彼女は驚いたのかキュッと目を閉じている。
「せ、先生…」
「ふふっ。顔赤いよ、美作さん」
そう言って俺は彼女の頬っぺたで遊び始めた。
女子生徒に触れる行為はセクハラになるとこの学園に来た時に何度も言われそれを守ってきていたが、目の前にある柔らかそうな頬っぺたを見ていたら思わず触れてしまっていた。
そんな自分を悟られまいと戸惑いながらもかっこつけて美琴に話しかける。
触ってみるとぷにぷにしててマシュマロみたいだった。
「ひゃひぇふぇ…ふゅひぁひぁふぃ…」
「えっ?何言ってるかわからないよ?」
「ひゃひぇふぇ…」
「えっ?なぁに?」
しばらく遊んでいたが、彼女が泣きそうだったのでやめてあげた。
「相良先生、頬っぺたが痛いのです」
「だから、お仕置きって言ったじゃん」
「むふぅ…。先生今日のパンツはイチゴパンツのくせに」
「えっ?」
「イチゴパンツー!」
「そ、そんなに大きな声で言わないでよ」
なんで俺のパンツの柄を知っているんだよ。
俺がイチゴパンツ履いてて何が悪いのだ、お気に入りなんだぞ。
でも、他人に見られたくないパンツだな。
「相良先生、可愛いパンツ履いてるのですね」
「このパンツ好きなの。てか、なんで知ってるの?」
「今日の現代文の授業中に先生のこと呼んで質問した時に、チャックが全開で、先生のイチゴが『こんにちは』してたのです」
「先生のイチゴとか言わないで。うわっ、俺恥ずかしい」
「それに気づいたの私だけなのです、安心してくださいなのですよ!」
彼女は『イッチゴ、イッチゴ』と歌っている。
全く安心できない。
生徒に見られてしまったという事実は変わらないし、彼女が話してしまうかもしれないからだ。
こうなったら口止めするしかないな。
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