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原田先生は俺の言葉を聞いていないようで、完璧な笑顔を保ちつつ、右手で近くにあったボールペンで遊びながら左手でクッキーをつまみ口に入れていた。
「原田先生、仕事してください」
すると原田先生は遊ぶ手を止めて、爽やかスマイルで言い放った。
「相良先生をからかうのが僕の仕事なんですよ」
「よくそれで教師続けられているんだか…不思議です」
一瞬原田先生は『心外だ…』とでも言いたげな表情をし、またすぐ笑顔になって俺の頭を撫で始めた。
「なっ…やめてください原田先生」
「僕はこう見えて要領がいいんですよ。でも、相良先生の方が大変ですもんね」
普通の人が言うと嫌味になる言葉も、原田先生が言うと何故か嫌味には聞こえない。
「それで何故頭を撫でてるんですか」
俺は頭を撫で続けている原田先生に呆れながら質問をした。
原田先生は撫でる手を止めることなく答える。
「可愛いからに決まっているでしょう」
「はぁ…。俺は男の人に頭を撫でられて喜びません!」
俺がムキになって言い返すと、原田先生は何かを考え込むような仕草をした。
「相良先生が喜ぶとしたら…やっぱり美琴さんですかねぇ?当たりですか?」
「はいっ!?何故そこで美作さんが出てくるんですか…」
いきなり彼女の名前が出てきて俺はドキッとしてしまった。
「だって相良先生、最近ずっと美琴さんの話ばかりするじゃないですか。僕の話もして欲しいなぁ」
「いろいろありましたからね。あの、最後の一言はいりませんよね?」
本人の前で本人の話をする意味がわからない…そういう意味で言ったのに原田先生は気づいていないようだった。
「僕のこと、嫌いですか?」
「ちょっ、原田先生泣かないでくださいよ…」
原田先生の目からは大粒の涙が。
それは初めて見る光景で、俺は少し焦っていた。
「じゃあ、僕のこと好きですか?」
「き、嫌いではないですよ。でも、好きかと聞かれると…うーん。あぁ、そんなに泣かないでくださいよ。俺が泣かしたみたいに…って俺が泣かしたのかー!」
俺が唸っていると、隣から原田先生の明るい声が聞こえてくる。
「あっ、これ目薬です!」
「……一発殴っていいですか?」
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