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「相良先生どこなのです?」
どうやら俺を探しているらしい。
彼女はキョロキョロと辺りを見回し、俺を見つけると今にも泣きそうな顔で近づいてきた。
「あっ、相良先生!」
「美作さん、どうしたの?」
そう問いかける俺の顔を見つめながら、彼女は空いている椅子に座って首を傾げた。
『言わなくてもわかってるでしょ?』とでも言いたげに。
「僕ね、最近雑誌で読んでわかったんですけど…好きな人と仕草が似るんだそうですよ!あぁ、2人は想い合ってるんですねぇ」
原田先生はクスクス笑いながら、俺と彼女のことを交互に見比べて『僕はお邪魔かもしれませんね。少し席を外します』と言い職員室を出て行った。
「原田先生は何を勘違いしてるんだか。ねぇ美作さん…って、顔赤いけど大丈夫?」
「へっ?あぁ…きっと風邪なのです!大丈夫なのですよ!」
「えぇー?風邪なら大丈夫じゃないでしょ。だってさっきより赤いよ?」
そう、彼女の顔はりんごのように赤かった。
確か…『リンゴ病』なんて病気があったはず。
そうか!彼女は具合が悪くて俺のところに来たんだな。
俺は熱が出てるのか確かめようと、彼女の額に手を当てた。
「ひゃっ」
「熱は…これあるのか?手じゃわからないなぁ。保健室行く?」
「わ、私は大丈夫なのですよぉ…」
「んー?具合悪くて来たんだよね?俺と一緒に保健室行って休もう。無理して授業受けても自分のためにはならないしさ」
「ちっ、違うのです…」
「違う?あっ、わかった!俺に気を遣ってるんでしょ!大丈夫だよ、気にしないで」
「やっ…お弁当を…」
彼女は自分のお弁当を俺の机に置いた。
「そういえば、なんでお弁当持ってるの?」
俺がそう言うと、彼女は自分のお弁当をポンポン叩いてふんぞりかえった。
「ここで先生とお弁当食べるために決まってるのですよ!そして先生、いつまでそうしてるつもりなのですか?」
「あぁ、ごめん…」
いきなり強気な態度で喋り出した彼女に、俺はびっくりして、額に当てたままの手を離し、謝ることしかできなかった。
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