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「私に勝とうなんざ、10万年早いのですっ!」
彼女は立ち上がり、腰に手を当てて俺を見下ろした。
「俺はただの人間だから、10万年後生きてないよ。美作さんは生きてるかもしれないけどさ」
俺は人間で彼女は神様(自称)、これから3年間一緒に過ごすなら彼女になるべく合わせて乗り切るしかない。
そう思ってるから言ったのに彼女は、
「いや…私だって普通の人間だから生きてないのです」
「うん、自分の設定は最後まで守ろうか」
自分が神様だって忘れていた。
何故俺が気を遣っているのだろう。
あれっ、そういえばさっき彼女は『お弁当食べる』とかなんとか言っていたような…。
「先生っ!一緒にお弁当食べるのですよ!」
「待って。まさかとは思うけどさ、お弁当食べるために授業サボったの?」
「失礼な!私はお弁当持って先生に会いに来たのです。それに時間作ってくれるって言ってたじゃないですか。だから、これはサボりではないのですよ!」
「確かに言ったけど、それは放課後とかであって授業中ではないんだよ。だから、それは『サボる』って言うんだよ。授業はちゃんと受けなよー。あー、もうっ!具合悪いんじゃないかって心配したよ」
俺は彼女に一度座るよう促し、授業は真面目に受けるようにと延々と注意した。
「相良先生、私のこと心配してくれたんですか?」
「当たり前でしょ。俺のクラスの生徒なら尚更心配するよ」
「ごめんなさい、心配かけて」
彼女は肩を落として項垂れてしまった。
俺は少し言い過ぎたかもしれないと反省の気持ちを込めて、彼女の頭を優しく撫でた。
彼女はポロポロと涙を流している。
「そりゃあ心配はしたけどね、俺は美作さんが元気だってわかったから嬉しいよ。でも、サボるのは良くないからね。次からは絶対ダメだよ?」
彼女は静かに首を縦に振る。
それを見た俺は満足し、撫でる手を止めた。
よく見ると彼女の顔はやっぱり赤い。
「ねぇ、顔赤いよ美作さん。熱あるんじゃ…」
「もうっ…照れてるだけなのですよ、馬鹿ー!」
そう言って彼女は職員室を出て行ってしまった。
他の先生がジロジロこちらを見ているが、それを気にしている余裕はない。
俺は彼女の後を追いかけた。
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