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「美作さんはどこ行ったんだよ」
俺は2年生の教室が並んでいる3階で彼女を見失ってしまった。
「走る訳にもいかないしな…」
廊下に貼ってある生徒会のポスターを見てため息をついた。
『走っちゃダメよーん』なんて生徒会も大変なんだな。
俺が困っていると、前から原田先生がにこやかに近づいてきた。
「相良先生、困ってますよね?僕に任せてください!」
「タイミング良すぎじゃないですか?」
「いやいや、偶然ですよ。偶然相良先生を陰から見守ってたら鉢合わせしてしまったのです」
「まさかのストーカー!?」
俺が疑惑の目を原田先生に向けると、原田先生は『冗談に決まってるでしょ』という表情をして肩をすくめた。
「さっきそこの階段で美琴さんとすれ違ったんですよ。その後に相良先生を見つけましてね、僕は悟ったわけですよ。仲良しカップルも別れの危機ってね」
「何も悟ってないじゃないですか」
彼女を早く見つけたい焦りを知ってか知らないか、原田先生は俺を苛立たせるような口調で話す。
俺はこのまま話しても埒が明かないと察し、原田先生の横を通り過ぎようとした。
「中庭じゃないですか?」
原田先生は急に真顔になり俺の方を向いて言った。
「中庭?」
「はい。これは僕の勘なんですけど。階段降りてすぐですから迷いませんよね?」
「もちろんです。じゃあ、行ってきます…」
俺は早歩きで階段に向かい降りようとした。
すると後ろから、
「僕は職員室で待ってますねー!彼女は泣かしちゃダメですよー!」
なんて原田先生が叫ぶ声が聞こえた。
「今授業中なので叫ばないでください。そして彼女ではありません!」
俺は手を振る原田先生に呆れながら階段を降りた。
原田先生のふざける癖はどうにかならないのか。
中庭に着き、辺りを見回したが誰もいない。
仕方なく別の場所を探そうと思った時、中庭の隅の方に人がいる気配がした。
よく見るとその人は定規を振り回している。
彼女だ。
「何やってるの…美作さん…」
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