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彼女は泣きながら何かと格闘しているようだった。
「こ、こっちに来ないでぇ…」
俺はこのまま職員室に引き返そうか迷ったが、定規を振り回す手が危ないので止めに行った。
「美作さん危ないよ」
「相良先生!?」
彼女はいきなり俺に後ろから話しかけられて驚いて固まってしまった。
そんな彼女の持つ定規を没収し、近くのベンチまで彼女を引っ張って行った。
「今何をしていたの?」
「蝶々がいたから追いかけてたのです。そしたら、毛虫がいて…」
「その場を立ち去るのが賢明な判断だと思わないかい?美作さん、怪我とかしてない?」
俺は彼女の手を取り怪我してないか確認した。
彼女は俺の顔をジッと見てる。
「えっ、何?何かついてる?」
俺が首を傾げながら聞くと、彼女は思いきり首を横に振った。
「あのっ…先生が…」
彼女は蚊の鳴くような声で言葉を続ける。
「近くで見ると可愛いなって…」
「えっ?あぁ、ありがとう」
彼女は少し黙ると噴水を眺めながら『眠い』と呟いた。
「相良先生、寝ていいですか?」
「ここで寝たら風邪引くよ……ってちょっと美作さん!?」
彼女は俺の太ももを枕代わりにして寝始めた。
所謂『膝枕』というやつだ。
「風邪引くってば…」
そう言いながらも俺は彼女をそのままにした。
授業が終わるまで後20分。
他の生徒に見られたらマズいと思い、15分だけ寝かせることにした。
俺は彼女に対して甘いのかもしれない。
その考えを払拭するために、俺は後で彼女に課題を2倍やらせることにした。
15分経つ頃には俺の体も冷えていた。
彼女が風邪を引かないようにさすったりしてみたが、効果があったのかはわからない。
「美作さん、起きて!」
「んー………ぐうぅ」
「起きてよ。あっ、じゃあね…起きたら頭撫でてあげる!」
彼女は勢いよく起き上がって頭を突き出してきた。
「先生撫でて欲しいのです!」
「嘘だよ。それより職員室に戻ろう。…あっ!」
「先生どうしたのです?」
「弁当…」
「あっ、私置いてきちゃったのです」
お弁当を職員室に置いてきたことを2人で思い出し、急いで職員室に向かった。
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