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「お弁当もですけど…僕のことも忘れてましたよね?」
職員室に2人で戻ると、原田先生は眉間にしわを寄せて唇を尖らせながら待っていた。
「お弁当は僕が保管しておきましたよ。だから安心してくださいね、美琴さん。でも、僕が放置されてた訳で…心が腐りそうです」
「なんか、すみませんでした」
俺が謝ると原田先生は、俺の後ろにいた彼女を見て手招きし、彼女のお弁当を差し出した。
「はい、美琴さん。僕お腹空いちゃってね、思わず開けてしまいました。手作りですか?」
「て、手作りなのです…」
彼女はぎこちなく返事をし、俺に助けを求めてきた。
原田先生はキョトンとしている。
俺は彼女を自分の隣に座らせ、原田先生に言った。
「とりあえず勝手に見たことを謝ってもらえますか?」
「そんなに怖い顔しないでくださいよ、相良先生。別に減るもんじゃないでしょう」
「気持ちの問題です」
「そんなものですかね?あっ、美琴さん!卵焼き美味しかったですよっ!」
「中身減ってるじゃないですか!」
俺と原田先生のやり取りを聞いていた彼女は、お腹を抱えて笑いだした。
「お2人は仲が良いのですね。お腹空いたから早く食べたいのです」
「そうそう、僕も相良先生を見てたら余計にお腹が空きましたよ」
「原田先生は俺のこと食べる気ですかっ!」
俺のツッコミを原田先生は無視してお弁当を食べ始め、彼女も同様に自分のお弁当に入っている唐揚げを食べていた。
…………俺も食べよう。
「相良先生、そんなに落ち込まないでください。ほらっ、トマトあげるのですトマト!」
「美作さん、気を遣ってるつもりなのだろうけど…何故トマトをチョイスしたの?美作さんの手作りのやつがいい」
「先生、そうやって人の優しさを踏みにじるのですか?はぁ…シュウマイなら食べてくれます?」
「うん、食べる食べるっ!」
彼女はチラッと原田先生を見て笑うと、俺の口の中にシュウマイを突っ込んできた。
「んぐぐ……もぐもぐ…うっ…おぇ………ぐふっ」
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