自称神様は中庭に降臨する

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「相良先生聞いてください!お花さんが咲きました!」 今話しかけてきたのは家庭科教師の原田将大先生。 原田先生は26歳で、爽やかな笑顔を絶やさない顔立ちの整ったファンクラブが出来てしまうほどのイケメンな先生だ。 放課後は女子生徒に囲まれながら料理をしたり、専門外である数学や英語など他の教科も頭に全部入っているようでわからないところを教えている姿を見かけるし、全校生徒からの人気は高い。 身長は俺より20cm高く、少しくらいわけてくれてもいいのにと思いながら見上げて話すこともしばしば。 そんな完璧イケメンと比べて俺は、黒縁眼鏡に短髪の童顔でチビなせいで10代だとよく勘違いされる25歳の現代文教師だ。 基本『相良先生』と呼ばれているが、本当に教師として見てもらえているのか疑問に思うくらい容姿をからかう生徒が多い。 「僕、桜さんとお別れしてから寂しくて泣きそうでしたよ」 去年原田先生は、桜が散っていくのを見て涙を流していた。 どんなモノに対しても感情移入してしまうようで、桜の花びらのしおりを作って『これは形見です』と言っていたことを思い出す。 「笑顔でいたほうが桜さんも喜ぶと気づいたので今年は泣きませんでしたよ」 「そういえば今年はお花見していませんね」 俺がそう言うと、原田先生は腕を組んで大袈裟にため息をついた。 「いえ、僕はしましたよ。相良先生が相手をしてくれないので夜中に1人でして来ました」 「何かすみません。この辺りではライトアップ22時までですから、夜中では見れませんよね?」 「そうなんですよ。だから僕、懐中電灯でライトアップしました」 そう言いながら原田先生は懐中電灯を点ける仕草をする。 その場に懐中電灯がないため、ペンで代用していた。 「あっ、なるほど!さすが、原田先生」 俺が感嘆すると、原田先生は顔を引き締めトレンディ俳優の様なポーズをして、 「ふふっ、自分の顔をね!」 と俺の顔を見ながら言った。 「ただのホラーですね。自分の顔を照らして…原田先生は一体何をしに行ったのですか」 俺のツッコミに、原田先生はのんびりとした口調で返事をする。 「まぁ、よくあるミスですよね」 「そんなミス、原田先生くらいしかしませんけどね」 最近『イケメンの顔だけ幽霊を見た』という話をあちこちで聞いたが、それは原田先生のことだろう。 わざわざ探しに行く人もいるらしい。
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