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「相良先生、クラス担任ってどんな感じなんですか?」
「孤軍奮闘みたいなところはありますね。生徒の小テストの結果から得意不得意を分析する難しさ、行事もこれといってないので話す機会も少なく色々と必死になってしまいますよ」
「相良先生は真面目なんですねぇ」
「いえ、そんなことはないです」
俺は今年から1年5組の担任をすることになった。
初めてのクラス担任ということもあって気合が入ってる。
気合は入ってるんだけど、よく迷子になって生徒が迎えに来てくれるという頼りなさはどうにもならない。
昨日も迷子になって困っていたら、生徒が放送で俺のことを探していた。
『相良先生どこで迷子になってるんですかー?誰か見つけたら先生を1年5組まで連れてきてください』と。
みんな笑ってたね、恥ずかしかったね。
穴があったら入りたいとはこういうことだろう。
そして俺はその穴の中で生活したい。
「ナビとかあったら俺は迷子にならないと思うんですよね」
「校内で迷子になってるの、相良先生くらいですよ。僕なんか目隠ししても迷子になりませんからね」
原田先生は笑って俺をまじまじと眺めた。
イケメンスマイルは今日も絶好調のようだ。
「そういえば、放課後時々目隠ししてうろついてますよね。何故です?」
「一種のプレイですよ。相良先生も一緒にやりませんか?」
これで『うん、やる!』と言う強者はいるのだろうか。
俺には無理だ。
まず、教師生活にピリオドを打つことになりかねない。
「えぇー、楽しいですよ?一緒にやりましょうよ!」
原田先生は俺がやりたがらないのを読み取って催促してくる。
俺が呆れて返事をしないでいると、原田先生は拗ねていた。
「そうですか…やってくれたら美味しいケーキ屋さん教えてあげようと思ってたんですけどね」
「なっ……」
「あそこのケーキ屋さん有名ではないけれど、生地がふわっふわでたまらないんですよね」
実は俺、甘いものが大好き。
特にケーキを食べてる時が1番幸せを感じるのだ。
この話なかったことにされたら…俺は発狂してしまうかもしれない。
「……る…よ…」
「えっ?相良先生なんですか?」
「やりますよっ!」
「ふふっ、その言葉待ってましたっ」
そう言うと原田先生は椅子から立ち上がり、俺の頭を撫でてから職員室を出て行った。
もしかして俺、からかわれてた?
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