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「ううっ!!ううっ!!」
サファイアは必死に叫んだが、さるぐつわを咬まされているのでくぐもった呻き声にしかならない。
「もがいても無駄だ。一緒に来てもらうぞ、ジュエリープリンセス」
男たちは2人がかりで、サファイアの体を抱きあげた。
ひとりが上半身を、もうひとりが足をかかえて、扉が開いた馬車の中に運びこもうとした。
「ううっ!!ううっ!!うううっ!!うう~っ!!」
(いやっ!!助けて!!誰か!!)
さるぐつわを咬まされ顔を激しくふって、サファイアは懸命にもがいた。
通気性の悪い布に口と鼻を塞がれて、息が苦しい。
「か弱い姫君を拐うのに男が数人がかりとは。見苦しいことこの上ないね」
ふいに、凛とした美声が夜気を裂いた。
「だっ、誰だっ!?」
気色ばんだ様子で、男たちはいっせいに周囲を見回した。
サファイアを拐いかけた男たちもいったん彼女を路上に降ろし、左右から腕を掴んで拘束した。
(だ、誰……!?)
大きな目をさらにみはり、サファイアは宵闇の彼方に視線を巡らせた。
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