第1章

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はぁっ……はぁっ…… サファイアは、夜更けの街を懸命に駆けていた。 お城からずっと走りづめだったので、足が痛い。 硬い硝子の靴、しかも片方は脱げてしまっていた。 (なんて……なんて恐ろしい……!!) ドレスの裾を摘まんでまろぶように走りながら、サファイアは恐怖に打ち震えていた。 金色の巻き髪はすっかりほつれ、乱れて頬に張りついている。 月明かりに浮かびあがる白い顔は、夜目にもわかるほど蒼ざめていた。 小さな薔薇色の唇は紫色に変色し、せわしないあえぎを漏らしている。 ぱっちりした青い瞳は、心の怯えを映して頼りなく揺れていた。 プリンセスランドきってと謳われた可憐な美貌は、恐怖に蒼ざめていても微塵も損なわれてはいない。 しかし、恐怖と過度の疾走により足はもつれ、心臓は今にも爆発しそうだった。
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