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はぁっ……はぁっ……
サファイアは、夜更けの街を懸命に駆けていた。
お城からずっと走りづめだったので、足が痛い。
硬い硝子の靴、しかも片方は脱げてしまっていた。
(なんて……なんて恐ろしい……!!)
ドレスの裾を摘まんでまろぶように走りながら、サファイアは恐怖に打ち震えていた。
金色の巻き髪はすっかりほつれ、乱れて頬に張りついている。
月明かりに浮かびあがる白い顔は、夜目にもわかるほど蒼ざめていた。
小さな薔薇色の唇は紫色に変色し、せわしないあえぎを漏らしている。
ぱっちりした青い瞳は、心の怯えを映して頼りなく揺れていた。
プリンセスランドきってと謳われた可憐な美貌は、恐怖に蒼ざめていても微塵も損なわれてはいない。
しかし、恐怖と過度の疾走により足はもつれ、心臓は今にも爆発しそうだった。
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