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「そうでしたか、てっきり意味を聞いているんだと思いましたよ」
「……黒影さんって言葉に刺がありますよね…」
「それは、ありがとうございます」
黒影はニコリと笑った。
「褒めてませんから」
「いえいえ、私にとっては褒め言葉ですから」
黒影はニコニコと笑ったままである。
「………。変な人ですね」
緋雨は自分にしか聞こえないように小さな声で呟いた。
「変な人とか、胡散臭い人とか、私にとっては褒め言葉ですから緋雨さん…」
黒影はコツンとグラスを棚に置いて
「もっと大きな声で言ってもらって結構ですよ?」
黒影は満面の笑みで緋雨を見た。緋雨は背筋を震わした。
「す、すみません……」
黒影は『地獄詐欺師(ヘルナサーブ)』という通り名を持つ人で、嘘をつくのが得意な人である。
たぶん、「私にとっては褒め言葉ですから」という言葉そのものが嘘なのだろう…。
それをなんとなく分かってしまった緋雨は冷や汗を頬につたわせながら目線をそらした。
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