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プロローグ
「今日は待ちに待った彼とデート!! 張り切って服を選ばなきゃ!」
彼と約束していたデートの当日になり、瑠奈(るな)はうきうき。
早起きをしてタンスの中のありとあらゆる服を引っ張り出し、鏡とにらめっこをしている。
「少しでも可愛くなりたいな」
暫くの間、鏡の前でファッションショーを繰り広げていた瑠奈は時計を見て飛び上がった。
「あと少しで待ち合わせの時間になっちゃう!!」
待ち合わせ時間は朝の十時。
今の時刻は、九時三十分。
待ち合わせで指定している場所までは最低で二十分はかかる。
早々と洋服選びを取り止めて、一番お気に入りの縁にフリルが付いた桃色のワンピースに着替える。
そして、鞄を引っ掴み軽く化粧を施して家を出た。
「あと五分! 急げば間に合う!!」
走って交差点を渡ろうとした時、信号を無視した車が猛スピードでこちらに向かってきたのが確認できた。
段々と近付いて来る車。
玩具の人形の様に、簡単に宙を舞う自分の体。
次いで地面に叩き付けられ、激しい痛みが全身を駆け巡る。
「瑠奈っ!!」
喧騒に紛れて、遠くで自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
瑠奈の意識はそこで途絶えた。
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