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そう思った瞬間、腹の底を突き上げるような、得体の知れない感情の塊が爆ぜた。
ぼくは泣いていた。
ひりついたように力を失っていた喉の奥から、自分のものとは思えないほど低いうなり声を発しながら。
堪えようもなかった。ぼろぼろぼろぼろ涙は溢れ、次から次へと頬を伝った。
嗚咽するたび涎が垂れて、涙の流れと混ざって落ちた。
兄の衣服の肩口は、ぼくの涙と唾液で濡れた。
身体の震えが――止まらなかった。
赤ん坊が泣くのはなぜか。
ずっと昔に本で読み、疑問に思っていたことの答えが、分かったような気がした。
ぼくはその日、世界に生まれ直したのだ。
あれほど強く憧れた、陽の光のあたる、眩しくて奇跡的な美しい世界に――
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