断章の1 -生誕-

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 そう思った瞬間、腹の底を突き上げるような、得体の知れない感情の塊が爆ぜた。  ぼくは泣いていた。  ひりついたように力を失っていた喉の奥から、自分のものとは思えないほど低いうなり声を発しながら。  堪えようもなかった。ぼろぼろぼろぼろ涙は溢れ、次から次へと頬を伝った。  嗚咽するたび涎が垂れて、涙の流れと混ざって落ちた。  兄の衣服の肩口は、ぼくの涙と唾液で濡れた。  身体の震えが――止まらなかった。  赤ん坊が泣くのはなぜか。  ずっと昔に本で読み、疑問に思っていたことの答えが、分かったような気がした。  ぼくはその日、世界に生まれ直したのだ。  あれほど強く憧れた、陽の光のあたる、眩しくて奇跡的な美しい世界に――
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