断章の1 -生誕-

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 ぼくは空腹を覚えつつも、本を読むことをやめなかった。  ぼくの推測が正しいのなら、このまま誰にも存在を知られずに死んでいくのが正しいはずだった。  ぼくは地上に出てはいけない。  父の罪を隠し、いるのかも知れぬ兄弟の身を守るために。  静かに、ひっそりと、お気に入りの冒険物語を読みながら、死んでいく。  それだけしかぼくの人生で意味をなすことはない。そのはず、だった。  ――あの日、眩しいくらい魅力的な笑顔の少年が、地下室の扉を開けるまでは。  彼を見た瞬間、直感した。  そう。  それは――外の世界で元気いっぱいに生まれ育った、ぼくの双子の兄だった。  兄は、垢にまみれて悪臭を放つぼくの手をためらわず取ると、少年特有の乱暴さで引っ張り上げた。  その目が、ぼくの軽さに見開かれる。  そして、自力で立てず再び倒れ込んでしまうのを見て、さらに驚きの声があがった。
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