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これまで自分だけのものだった世界が、階段を一歩上るたびに、知らない姿へと変貌していく。
世界にはぼくの知らない物事の方が多いのだと分かってくる。
それは恐怖だった。
絶叫し、転げ落ちてでも元いた地下室へ戻りたくなるほどの――
眩しい笑顔の少年の、力強い手に噛みついてでも振り解き、もう二度と来ないでくれと嘆願したくなるほどの――
けれど、ぼくにはそうするほどの力も意識も残されてはいなかった。
ただ恐怖し、階段の先に震える視線を注いだ。
蝋燭の灯りしか知らない目には眩しすぎて、突き刺すような、痛みすら伴う光がそこにあった。
――じんわりと、涙がにじむ。
――太陽の、光だ。
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