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綺麗な顔をしているが、飄々としてどこかとらえどころのない少年だった。
「こどもの家」の少女たちの熱い視線にも“勝手に惚れてくるだけや”と全く意に介すこともない。
そんなジョニーを、言い方が鼻につくだとか、見下しているだとか悪口を言う少年たちも多く、それが肥大化して悪質な嫌がらせに変わるのにそう時間はかからなかった。
ジョニーは飄然とはしていたが、だんだんと喋らなくなり、だんだんと笑わなくなっていった。
嫌がらせによる身体中の傷を見られるのが嫌で、ジョニーは率先して垢に塗れた最後の風呂に入っていた。
ある日、いつものように風呂場の扉を開けようとした時、唐突に声をかけられた。
「ちょうどええわ、一緒に入ろか、ジョニー」
振りかえるとそこには浅黒い顔の、八重歯をむき出しにして笑っている年上の少年がいた。
「ちょお、いろいろあってやな、入りそびれてん。悪いけど、ええよな?」
悪びれない笑顔につられて、ジョニーは思わず頷いてしまった。
「うっわ!ヌルヌルやん!よお、こんな風呂に入ってんなあ!」
ジョニーは隣に座るジャッキーがそのヌルヌルした湯で股間を洗い流す様子を見て、妙な気持ちになるのに戸惑った。
手拭いで丁寧に洗うその身体は驚くほど丸みがなく、硬そうだった。
「なんや、手拭い忘れたんか?貸したるわ」
ジョニーの視線に気がついたジャッキーは、手拭いを一度濯いでから硬く絞り手渡そうとするや、丸い目を見開いてジョニーの腕を掴んだ。
「おいっ!お前、この傷なんやねん!」
(ばれた!)
風呂の中は外気との温度差で湯気がもうもうと立ち上がっていたので、そう近づかなければ自分の傷など気がつかないだろうとジョニーは油断していたのだ。
ジョニーは慌ててジャッキーの手を振りほどく。
「誰や」
そう言ってジャッキーはジョニーの腕を再び掴み直した。
「誰にやられとんねん!」
ジョニーは顔を伏せたままガタガタと震えだす。
「言われへんのんか」
ジャッキーは立ち上がり、「先に湯ぅ浸かって出るわ。腹括ったら来や」と湯煙の中に消えていった。
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