深く潜れ

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* 翌日、指定された時間にジャッキーが店に向かうと、狭いが活気づく店の真ん中でマックは待っていた。 長い脚を組んで物憂げにメニューを眺める姿は、見慣れているはずなのに何故か惹き込まれてしまう。 ジャッキーははたと我に帰り、頭をぶんぶん振ってから自分を正気に戻し、楽しげに語り合う男女や一人で酒を飲む男性客の前を通り、マックの前に辿り着く。 「待たせたか?」 「いや」 「ええ感じの店やん」 「そうやろ。この店、ワイン、旨いらしいで」 「ほんだら、料理選んでからぁ、なんか見繕ってもらおか?」 「そうやな」 ジャッキーがメニューを開いて料理を選んでいると、ギャルソンがメニューの書かれた黒板を持って恭しく二人のテーブルにやってきた。 「こちらが本日のメインのお料理です。こちらに合わせた“お勧めのワインをお持ちします”」 ギャルソンが定型文を言い終わると、店内の人間全員が立ち上がり、マックとジャッキーに銃口を向けた。 「ジャッキー、伏せろ!」 ジャッキーに向かって発砲が始まった瞬間に、マックはジャッキーに覆いかぶさり、倒れたテーブルで銃弾を避ける。 店内の人間の発砲が終わったかと思うと、続けざまに店のガラスが割れ、外からも銃撃が始まった。 外にも複数人の狙撃班が控えているようだ。完全に包囲された二人は袋の中の鼠。 「走るで」 ジャッキーの耳元でそう囁くと、マックはテーブルの裏側に仕込んでおいた銃の安全装置を外し、発砲するギャルソンを一発で仕留め、男性客を連続で撃ち抜いた。 女性客の銃弾がマックの長い脚を掠めたが、顔色一つ変えずにアイスピックを女の閃くドレスの裾をめがけて投げ放つ。女の身動きが取れなくなったのを確認するマックにジャッキーは“甘い”と言いたげに睨み、ギャルソンが運んできた黒板を女にスピンをかけて蹴りつける。 その後二人はすぐさま店の奥へと逃げ進んだ。
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