深く潜れ

6/10
前へ
/10ページ
次へ
* 「_____あっ_____はっ、ぁっ…ま____」 「しゃべるな!」 ひゅーひゅーと息を漏らすジャッキーの腹はどんどんと鮮血に染まっていく。 マックは壊れ物を扱うように、ジャッキーの身体を脱がせたジャケットの上にそっと降ろした。 ネクタイを解き、ベルトを外して血に染まったシャツを裂く。 血が溢れだす左の横腹には弾が埋まったままだ。 「くっそ」 「__ま、マック、はーーーーーっ、はーーーーーっ、マック…」 「なんや、どうしたんや」 「____あつい…ぬいて…たま、ぬいて…」 「抜け言うても、お前…」 「___こ、これ、…これ。使こて」 ジャッキーは血だらけの手で自らの武器を震えながら手渡す。 マックは少し躊躇したが、ジャッキーのポケットに手を突っ込んでライターを取り出すと、ナイフを炙った。 手の届いたワインを口に含んで患部に吹きかける。 マックはジャッキーを見た。 ジャッキーは潤んだ瞳で悟りきったかのようにただ待っていた。 「いくで」 マックの手にしたナイフがジャッキーの腹を抉る。 「_____あ、あああっ!」 ナイフが腹を進む毎に、掠れて苦しげな声がだんだんと悩ましげな喘ぎに変わっていく。 「は、は、は、___あっ___マ、マック。も、もちょっと……上___は、そう、そこ。」 途切れ途切れにジャッキーが懇願すると、マックは一瞬も焦らさずにそれに応えた。 「___う、あっあっあああっ、んん…は、は、は、」 悶えながら目の前の男の名前を呼び、ジャッキーは白い腕にギリギリと爪を立てる。 応酬のように突き立てられたナイフはようやく弾に辿りつき、ずるりと抜けていった。 弾を取り除いたマックは、自らのジャケットを脱いで気を失ったジャッキーの腹を巻いてきつく縛った。 まるで血の気のないジャッキーの頬に触れ、息をしているのを確認するとマックは施策を練る。 だが、右足は自由が効かない、弾ももうない、相棒は生死を彷徨っている。この状況で何ができると言うのか。 「サイアクや、電波も入らん」 マックは役に立たない通信機を放り投げ、四肢を投げ出してジャッキーの隣に仰臥した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加