『押入れ脱出ゲーム』

3/16
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 オフィスビルのエレベーターを降りて玄関を出る。外はまもなく日も落ちる夕暮れ時だ。 「よ~しっ! ユキナ、ユキナッ!」  その時、風が吹き俺の胸ポケットからさっきのメモが舞い上がった。  引き飛ばされそうになりながらも反射的にメモを掴んだ俺は、なんとなく番号をプッシュし始めた。 「ちっ……まぁ本当であれば就業時間だしな……」  コールが1回、2回、3回。  その時だった。 ──『おめでとうございます』  第一声で他人にかける言葉ではない。それに機械で合成したかのような……。なんとなく身構えた俺は、慎重に切り出した。 「なに? なんなの?」 『おめでとうございます。 本日のチャレンジャー『タケイ』様!  ゲーム開始です!』 「はっ!? オタクどこの会社?」 『10,9,8,7,6……』  謎のカウントダウンに、なぜか額の汗が吹き出てきた。  俺は辺りを見回した、主婦やOLが不審人物のように見てきたが、とにかくいても立ってもいられない。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!