第1章 内なる心情と死神の葛藤

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殺気を帯びながらゆっくりと近づいてくる留奈。 留奈のナイフが総司の首に当てられ、後はナイフを引くだけで、総司の人生が終わる。 「…………。なぜ? 何故殺せない………。」 「………?」 包丁を持つ左手が震えている。 ふと気づくと吹雪と共に留奈の体から殺気が消えていた。 〝!?これは?〟 明らかに躊躇っている。 総司を殺すなら何度もチャンスはあった。 だが、留奈はそれをしなかった。 いや、出来なかったのだ。 〝試してみる価値はあるな……〟 そう思い、首に当てられたナイフを払いのけ、間合いを取ると納刀し構える。 「いくぞ!! 天心流……!1の秘剣……!!」 刀の鞘走りを利用し、相手を寸断する居合の技。 その技は神速を超えるとかまいたちを発生させ、刀とかまいたちによる二重の傷を負わすことが出来る。 「影郎!!!」 「!?」 真っ二つに切り裂かれ消える留奈の残像。 ここまでは読み通りだ。 〝次に頭上から留奈殿の一撃が来る。 読みが外れれば…私は……〟 頭上からヒシヒシと感じる留奈の殺気。 だが、気配が近づくと共に殺気が薄れ、背後から留奈の足音が聞こえた頃には、殺気など微塵にも感じなくなっていた。
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