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「何故だ!何故…殺せない!!
お前!!!
私に何をしたぁ!!!」
今まで殺そうと思って、殺せなかった相手はいない。
だが、総司は違った。
何度殺そうとしても、脳裏に二人で墓を作った時のことが浮かび、手が止まってしまう。
自分の中の歯車が抜け落ちてしまったかの様に調子が狂っている。
「留奈殿………。」
総司は納刀するとゆっくりと留奈のそばへ歩み寄っていく。
「くっ!?
来るな!!
近づかないで!!」
留奈は半狂乱になり、武器をデタラメに振り回し、まるで怯えた猫の様に威嚇してくる。
そんな留奈の手首を掴み、総司は抱きしめるとそっと耳元に囁いた。
「大丈夫だよ。
私は何もしていない。
それは、君自身が私を殺すことを拒否しているだけなんだ。」
「あぅっ……。」
総司の温もりが、冷えきっいた留奈の心を温め、吐息が耳をくすぐる。
留奈は恥ずかしさのあまり、総司の体を突き飛ばし、大声で叫んだ。
「なっ!?何をするぅ!!!」
心臓がバクバクと音を立て、今にもはちきれそうなくらい高鳴っている。
〝くっ……調子が狂う〟
「ハハハッ。
なんだっ。やはり、そんな表情も出来るんじゃないか。」
戦いなど忘れた様子でケラケラと笑う総司を前に、留奈は毒気を抜かれた様にキョトンとした表情で首を傾げている。
「自分で決めるんだよ。
誰かの為に、己の手を血で汚す必要はないんだ。
留奈殿の手は誰かを殺す為にあるんじゃない。
未来を掴む為にあるのだから。」
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