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少女は「慣れること」と「我慢」が特技であった。
自然と身についてしまった、彼女自身もあまり自慢の出来ない特技であったが、幼い頃はその特技をよく大人たちに褒められた。
少女には両親がいない。列車の整備不良による事故によって彼女がまだ3つの頃に亡くなってしまったからだ。幼くして少女は兄と二人きりになってしまった。残った血縁者は当時一度しか顔を合わせたことのない祖父のみであったが、学者であった祖父は現在行っている調査の都合上同じ場所に留まれなかった。そのため、祖父の手続きの後少女と少女の兄は孤児院で生活することとなった。
自分の他に20人を超える子供がいたためか、我儘の通らない孤児院では大人しくしている子供が一番褒められた。大人しい自分は周りの子供とどこか少し違うと自覚していたが、それでも褒められて悪い気はしなかった為かそれを良しとしたのを今でも少し気に留めていた。
孤児院で暮らして4年ほど経過した。15歳になる、もしくは里親が現れるなどして子供達は孤児院を去り、それと同等のペースで新たに行く先を失った子供が迎え入れられられて、当初少女が孤児院に来たばかりの頃の半分は孤児の顔が入れ替わっていた。
新しく入ってきた孤児の中に、一際目立つ存在がいた。この国では見たこともない、真っ白な頭髪を持った少年であった。
少年は少女と同じであった。何かを頑なに我慢し、一つの我儘も言わなかったのだ。その為か少年はだんだんと孤児院の中でも孤立するようになった。少女はそれが気にかかり、兄にそれを伝えた。
兄は正義感の強い人間だった。小さな頃から誰にでも優しく、笑顔の見えない同世代の子供をいつも気に掛けていた。そして幾度となく笑顔を失っていた子供を持ち前の元気で救っていた。
兄は同様に、少年に手を差し伸べた。その後は言うまでもあるまい。兄と少年は、生涯の親友となったのだから。
やがて兄と少年は15になり、少女と一緒に孤児院を後にした。3人は共に生きることを決めたのだ。少女もその頃にはもう12になっており、沢山の人情の機微に触れてきた。その中には勿論、孤児院内での恋愛も含まれている。複数の女の子に恋愛相談をされた。幾人かの男の子に恋心を告げられた。そんな経験をして、少女もやがて恋をした。否、自らの恋に気付いたと言うべきであろう。
少女は、白髪の少年を慕っていた。
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