エピローグ

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 悪夢は未だ続く。  動かなくなった少女の前に、一人の男が降り立った。  全身を黒い衣装で覆い、フードを深く被っている。辛うじて見える顔の下部分に皺や髭がなく綺麗で、線の細い体をしていたところから、まだ若い、下手をすれば少年の域である可能性も否めないだろう。 「こんなみっともない顔をして、最期はこんなものか」  独り言を言う。少女のように薔薇に話しかけていたのではない。唯々呆れたように声が漏れた。 「弱い精神だ。現実世界でもきっと、まるで何かに依存するかのように生きてきたのだろうな」  少女の精神が壊れるのが早すぎて、男には退屈だったのだ。  赤は攻撃の色。興奮の色。警告の色。  しかしこれほどまでに鮮やかで美しい赤色はないだろうと、足元の薔薇を見ながら思った。自分で創りあげたものではあったが、やはり多少の感動はあっただろう。 「次はもう少し骨のある<アリス>が来てくれると面白いんだけどな」  口角を上げて気味悪く笑うと、男は足元の薔薇をどうでもいい小石のように踏んづけて姿を消した。  男が消えた後のこの空間には、もう何も残されていない。  『生命』は既に停止している。誰も観測できる者は居ない。  男が望むのならば、彼女のように扉を開くものは後を絶たないだろう。  そう。悪夢は、まだ続く。   to be continued →続き「黒く染まった彼の名は」へ。
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