Thorns and Roses, and The Girl.

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 気が付けばそこは、陽の光の届かない深い深い森の中だった。  少女はいつの間に森が深く、暗くなったのかが分からなかった。僅かな希望を持って進んだはずの道の先が、こんなにも暗く不安にさせる場所だと知った少女は落胆した。  見上げてもそこには木々があるだけだった。開ききった瞳孔が、僅かな光を捕まえては少女に最低限の視界を与えている状態。爽やかだったはずの木々もまるで彼女を威圧するかのような悍ましい姿に見えた。  変わったのは明るさと木々の量、小鳥のさえずりの有無程度のものであったが、彼女にとってはたったそれだけの差が世界の見え方を反転させていた。  戻りたい。戻りたい。彼女はそう心の中で叫びながらも進む足を止めることが出来なかった。  立ち止まるのが恐ろしかったのだ。振り向くのが酷く怖かったのだ。改めて自身の弱さ、精神面の脆さを知った。  背後から。側面から。上から、下から、斜めから正面から、自身に突き刺されたものを少女は既に犇々と実感している。  視線だ。  人間のものではない。獣のように獲物を狩るような視線とも違うと彼女は本能的に判断した。しかし、その視線は全く良いものではなかった。四方八方から拳銃を突きつけられ構えられているかのような殺意を感じたからだ。今までに感じたことのない、少女を生きた「何か」としか見ていないかのようにも感じられた。  逃げなければいけない。早くこの暗闇を抜けなければならない。  歩き続ける少女の視線の先にはまだまだ暗闇が続いていたが、やはりその道は限りなく直線であった。  全身が緊張で満ち、溢れた分は冷や汗となって少女自身を更に焦らせた。  振り返ることは出来ない。引き返すなんてもってのほかだ。逃げろ、逃げろ。少女の動物的とも言える本能が彼女自身に強い命令を下していた。  体は恐怖で震えているが、頭は冴えていた。どうするのが最善なのか、それを判断する冷静さが彼女には十分残っていた。  震える脚を掌で叩き、気を引き締める。まだ走れる。大丈夫だ。彼女は自身の体にそう言い聞かせる。  短い初動の後、少女は今自分が出せる全速力で真っ直ぐに走りだした。勿論早いわけではない。少女は運動が得意なわけではないのだ。それでも歩くよりは何倍もマシだと思えるほど、少女はただ走ることだけに集中出来た。 「きゃっ!」  少女のか細い右腕が、背後から何者かに掴まれた。
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