第1章

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着なれない制服は、希望と不安がちらついていた。 ざわつく教室は、ふわふわと、視線が舞う。 僅かに、去年の痕跡を残した机も、まだわたしに馴染んでいない。 この教室の空気も、景色も、席順も、まだまだ、わたしに馴染んでいない。 「みどり!一緒だね!」 ただ、この馴染まない教室で、唯一しっくり来る声が聞こえた。 「彩子!しかも席となりだ!」 読みかけの星の王子さまにしおりを挟み、一昨日ぶりの彩子を見る。 ついその日に、同じクラスだったら奇跡だね、なんて話をしていたばかりだった。 かばんを下ろし、彩子は席に座る。 「奇跡だね、わたしら。」 ふふ、と二人で笑い合う。 馴染まない制服も、教室も、机も、たった一人の存在だけで、明日からの希望に変わっていく。 ***
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