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「まだかな…」
ある夏の日の夕方。私ー桐間 紗路は、上野駅の地上ホームである人を待っていた。
「シャロちゃんごめーん!」
「やっと来た。遅いわよ、千夜」
駅の西側のコンコースの方から、私の名前を呼びながら走ってくる一人の女の子。そう、待ち合わせ相手は、私の幼なじみの宇治松 千夜。
「ごめんね、家にカメラを忘れちゃって、取りに戻ってたから電車2本遅れちゃったの」
「まあ、まだ時間はあるし大丈夫よ。それにしても、カメラなんて別になくてもよかったんじゃないの?」
「ううん、せっかくシャロちゃんと二人きりで旅行に行くんだもの。一緒の写真もたくさん撮りたいわ」
「そ、そう…」
改めてそんなこと言われるとちょっと照れちゃうじゃない…。
そう、私たちはこれから二人きりで旅行に出る。どうしてそうなったのか、話は半月前に遡る。
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