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「とりあえず、まだ少し時間があるから夕ご飯のお弁当買いましょう」
「そうね」
千夜の提案で、ホームの周りにある駅弁屋さんを見てまわる。美味しそうなお弁当がたくさん並んでいて、目移りしてしまう。
「うーん、どれにしようかなあ…。千夜は決めた?」
「私も考え中。いろいろあると迷っちゃうわね」
「よし、私はこれにするわ」
「あら、シャロちゃん決まったの?決まらないから私も同じのにするわ」
「迷ってた割にずいぶん人任せな決め方ね…」
私と千夜が同じお弁当を買い、地上ホームに戻ると、ちょうど一番端のホーム、13番線に青い列車が入線してくるところだった。
「あの列車ね。なんだかワクワクしてきたわ」
『北斗星』のマークを掲げたその列車は、ぴたりと停車位置に停まり、ドアを開いた。
あの列車が、私と千夜を北海道まで連れて行ってくれるのか…。
そう考えると、なんだか私もワクワクしてきた。
部屋を確認するために千夜が取り出した切符には『9号車 1番』と書かれていた。二人で列車に乗り込み、その部屋に入ると…
「わ、広ーい!私の部屋より広いんじゃないかしら?」
あまりの広さに、思わず悲しい感想をもらしてしまった私。
「この部屋はこの列車の中で一番豪華らしいけど、これはすごいわね…」
千夜も私と同じように呆気にとられていた。
部屋の中にはベッドを兼ねた大きなソファー、回転式チェアー、大きな鏡、テレビなどが備え付けられていて、部屋の真ん中にある扉を開けると、そこには洗面台とトイレ、そしてシャワーまであった。
「こんな部屋で北海道まで旅できるなんて、なんだか本物のお嬢様になったみたいな気分ね」
私がそんなことを呟きながら窓際のチェアーに座ると、千夜は何か思いついた様子でカメラを取り出し、こう私に言った。
「ねえシャロちゃん、ちょっとそこでお嬢様ポーズしてみてくれない?」
「な、なんでよ」
「こんな部屋だから、きっとシャロちゃんのお嬢様ポーズがすごく絵になると思うの」
「…普段のボロ家じゃ似合わないとでもいいたいの?」
とりあえず、千夜の言う通りにお嬢様ポーズを取ってみる私。千夜は私をカメラで写すと、撮った写真を見せてくれた。
「やっぱりすごく合ってるわ」
「そ、そう…?」
自分で言うのもなんだけど、確かにちょっと絵になっているかも。
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