§最終章Ⅰ§

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「なぜ、子供を連れて私を訪ねて来なかったんだっ…!?」 うつむき加減でいた春香さんだったが、やがて顔をあげた。 「あの写真が嘘であるように“でっちあげられた”という確たる証拠もないのに、のこのこと訪ねて行って、一生懸命弁明したところでどうなるというのです?」 敦志さんは何かを言おうとしたが、 「勅使河原家の皆が、私と翔君が通じていたと思っていたのですよ?」 春香さんの勢いに圧されて口ごもってしまった。 「そんな中、子供を見せて涙ながらに訴えた所でどうなるというの!?」 だんだん感情が昂ってきて、しゃべりがヒートアップしている。 「“誰の子かわかったものじゃない、金目当てでやってきたのか?”と、言われるのがおちでしょうっ!?」  言い切った後、後を追うように春香さんの目から涙が落ち、頬を伝った。
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