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親父は苦虫を噛み潰したような顔になり、母親に目配せした。
母親はうつむき、もう仕方ないという表情で小さく頷いた。
親父は意を決したように話し出した。
「お前は……癌なんだよ……」
「え?」
「しかも、末期でな……
医者も手の施しようがないそうだ……」
「………」
「その医者が言うには、あとどう長く見積もっても余命は二週間だそうだ……
明日、医者から検査の結果と共に知らされる予定だ……」
「ちょ、ちょっと待てよ!?」
「場合によっては、余命はもっと短くなる……
現時点で既に予断は許さない状況だ…」
「抗癌剤とかで治るんじゃないのかよ!?」
「もう、抗癌剤でどうこうできる状況ではないらしい。
抗癌剤を使えば、癌で死ぬ前に抗癌剤で死ぬそうだ…」
「他に何か方法は……」
「何もかも……手遅れ……だ……」
親父はうなだれた。
床には涙と鼻水がポタポタと垂れていく。
自ら望んだとはいえ、現実はかくも過酷で残酷だった。
現実を知って私は愕然としていた。
両親は私に顔向けできないのか、じっとしてうついていたが、
「詳しいことは、また明日だ…」
とだけ言って、そそくさと病室を出ていった。
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