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(なんだよ、事実がそんなにショックなのか?)
「!」
気づいた時には、夜が明けていた。
知らぬ間に眠っていたらしい。
(二週間ねぇ。そんなに持つとは思えないがな。
まあ、大した違いじゃねぇよ。
結果発表が早いか遅いかの違いさ。
結果はどうなるか解ってんだからな。)
「今日は妙に饒舌だな……」
(そりゃな。
お前はだんだん弱っていくが、俺はどんどん強くなっていくからな。
明日はもっと調子よくなるぜ)
「どんなに強くなったって、結果は解ってんだろうが、全く馬鹿げてる。」
(かもな)
ふと見上げると看護士が怪訝な顔で見下ろしていた。
妙な独り言を言ってるように見えたらしい。
「あ、おはようございます。」
「おはようございます。
今日は10時から先生の回診があり、その時に病状の報告と今後の治療についての説明があります。」
「いえ、昨夜、父から聞きました。
もう手遅れだと……」
「それについて、私から説明できることではありません。
とりあえず、点滴の交換と検温をさせていただきます。」
私が、既に親父からすべてを聞いたことを知った看護士は急によそよそしくなり、点滴の交換と検温をして、日誌に記帳すると、そそくさと病室を出ていった。
点滴が終わり、チューブを抜いてしばらくすると両親が荷物を抱えて病室に入ってきた。
昨夜の険悪な雰囲気を引きずったまま、お互い言葉を交わすことなく、両親は黙々とタオルや着替えを備え付けのタンスにしまっていた。
私は軽く身体を拭くと、両親が持ってきた新しい肌着と寝巻きに着替えた。
時間はもうすぐ10時。
結局、私たち親子は一言も言葉を交わさなかった。
重苦しい雰囲気のまま、昨日の医者が病室にやってきた。
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