胎動

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「おはようございます。体調はいかがですか?」 医者は決まりきった挨拶をした。 「先生、昨夜、父からすべて聞きました。」 「え?」 「末期癌で手遅れなんでしょう。」 医者は両親を見たが両親は目を逸らした。 医者は頭を掻きながら 「はい、その通りです。 すべての検査結果はまだですが、昨夜よりも悪い結果が出ております……」 両親は驚いた。 「ええ!?まだこれ以上悪くなるんですか!?」 「はい、癌細胞の浸食は予想よりも進んでおります。 余命は更に短くなるでしょう。」 「あああ……」 両親はうなだれた。 しかし、私は既に覚悟を決めていたので、割とすんなりと受け入れた。 医者は続けて 「もう、手の施しようがありません。 ですので、これからは点滴で生かしつつ、痛み止めを処方していくしかありません。 痛み止めはどんどん強いものになっていく為、意識が途切れることも多々あるでしょう。」 両親は顔面蒼白になった。 「親父、しっかりしてくれよ。 親父がしっかりしてくれなきゃあ、どうしょうもないだろ。 もう、ここまできたら、仕方ないじゃないか。」 「あ、ああ……」 医者は今後のことについて二三説明すると、診察があると言って出ていった。 若い女医がやって来て、痛み止めの注射をした。 苦しみがだんだんと楽になっていくのに比例して意識が遠くなる…… 気づいた時には眠っていた。 意識を失っていたといった方が正しいかもしれない。 両親は黙ったまま、病室にある椅子に腰掛けて私を見ていた。 何と声をかけて良いかがわからないという表情だった。
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