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「先生!患者さんが暴れています!」
医者はすぐやってきて
「モルヒネは耐性がつきやすいからな…
だんだん効きが悪くなってきた……
とりあえず、一単位注射して様子を見よう。」
看護士たちは私の身体を抑え、医者は痛み止めを注射した。
意思が遠くなった。
(おいおい、あんまり無理はすんなよ。)
「!」
気づいた時は深夜だった。
廊下はほんのり明るいのが分かったが、誰もいない。
(気分はどうだい?兄弟)
「兄弟なんて呼ぶな、この化け物が」
(確かに俺は化け物かもしれないが、俺もまた人間だと言っただろ?
まあ、お前が言った人を食らい尽くす化け物ってのは面白い。
是非、お前以外も食らってみたいものだな、ハハハ)
「殺して……やる…」
(無駄だって言っただろ)
「殺してやる…お前を殺してやる…」
(仮に俺を殺せたところで、何も変わらねえぜ。
カート・コバーンが自ら頭を撃ち抜いたところで、世界は何も変わらなかっただろ?
それと一緒さ、ハハハ)
「変わらねえかどうかは、私が証明する。」
私は力を振り絞り、立ち上げると、窓に向かった歩いた。
窓には鍵がかかっていたが、ガラスはごくごく普通のガラス。
私は椅子を持ち上げると、全力で椅子をガラスにぶつけた。
一度目でガラスにヒビが走り、二度目でヒビは更に広がり、何度目かでガラスは割れた。
私はベランダに立ち、下を見下ろした。
七階の病室は、地面まで約30メートル。
下は駐車場のアスファルトだ。
相当運が無い限り、確実だろう。
(おい、何するんだ!
止めろ!無駄なんだよ!)
「無駄かどうかは、問題じゃない。
私はお前を殺す…!
どんな手を使ってもな…!
こうなれば、お前を道連れにしてやる!!」
(やめろおぉぉ!)
ガラスが割れる音に気づいた看護士が病室に飛んで来たのを合図に私はベランダから飛び降りた………
六階……
五階……
四階……
三階……
二階……
アスファルトの地面はどんどん近くなって行く。
一階……
…………
身体の重心に近い腰から私は衝突した。
脊椎が圧迫され、潰れる音を聞いた。
それが、私が最期に聞いた音だった……
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