胎動

2/18
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、」 窓を見ると既に夜が明けていた。 布団は脂汗でべっとりと湿っている。 ずっと前から続いている体調不良で、バイトもできなくなったのは半年前。 病院に罹る金もない私は、市販薬で治そうと思ったが、症状は日に日に悪くなる。 何故、私がこんな目に遭うのか…… 思えば、十年前の大学一年の時だった。 当時、付き合っていた同学年の彼女を妊娠させてしまった。 たまたま使用した避妊具が不良品だったのだろう。 もしかしたら、誰かがイタズラをしたのかもしれない。 大学一年の晩秋に、彼女から生理が来ないことを告げられた時、私は嫌な予感がして、すぐに病院に行った。 嫌な予感は的中した。 妊娠3ヶ月。 まだ十代の私たちには堕胎しか選択はなかったが、彼女の負担を考えると時間は余りない。 私は堕胎費用の為に、親に泣きつくしかなかった。 彼女も同意の上で堕胎したが、人の口に戸は立てられない。 彼女が退院した頃には、噂は大学中に広まり、いたたまれなくなった彼女は年明けも待たず自主退学した。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!