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このことは当然、私の親の耳にも入り、こっぴどく怒られた。
彼女側の親も怒鳴り込んできて、親父から勘当され、縁を切らされた。
親の援助もなく大学に通うのは難しい。
私も年明け早々に大学を退学した。
資格も学歴も保証人も無い、若いだけの男が、社会で生きるのは厳しい。
昨今の不況で、こんな男を正社員で雇ってくれる会社は皆無だった。
必然的に日雇いやバイトでなんとか食いつなぐのがやっとで、資格取得やキャリアアップなどできる余裕はなかった。
全く将来に希望が持てないまま、私は二十代を終えようとしている。
そこにきての、この体調不良。
コツコツ貯めた貯金は既に使い果たした。
もう、どうしょうもない。
あんな女と付き合うんじゃなかった……
節々の痛みに耐えかねてなけなしの金で買った痛み止め薬を空きっ腹に流し込みながら、こんなことを考えていた。
私はゆっくりと起き上がると、ゴミだらけのテーブルにおいてあるエコーに手を伸ばし、一服する。
もう、毎日の習慣だった。
本当はマルボロがいいのだが、そんな余裕は無い。
しかし煙を少し吸っただけで、咳き込み、気持ち悪くなってゴミ箱に嘔吐する。
半分も吸っていないタバコを灰皿でもみ消すと、我ながら、何をやっているんだという気分になる。
わかってはいるのだが、身体が、頭がニコチンを欲しているのだ。
性懲りもなく、またタバコに火を点ける。
タバコを吸いながら、テーブルの上のペットボトルを見ると、既に空っぽになっている。
先月、水道まで止められてからは、水が無くなると近くの公園の公衆トイレから水を汲みに行っている。
もう水が無い以上、また汲みに行かなければならない。
私は自分の身体とは思えないほど重い身体を引きずりながら部屋を出た。
歩いて数分の距離が、果てしなく遠く感じる。
私の意識はそこで途絶えた。
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