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「先生、あの患者さん、目を覚ましました。」
「そうか…」
「どうしました?」
「彼の家族の方々に連絡はつくかな?」
「はい、多分……
彼の所持品の中に古い学生証があったので、連絡はつくと思います。」
「では、連絡をとった方がいいだろう。」
「しかし、彼から了承を得るべきかと…」
「私としては、今は彼に要らぬ不安を与えたくないのだよ。」
「はあ…」
「彼の首筋が腫れているのに気づいたか?
点滴の際に採取した血液検査の結果からも考えて、相当悪い。」
「首筋……
まさかリンパ節に……」
「もっとも、詳しいことは明日以降の検査次第だが、リンパ節に転移してあれだけの増殖をしている以上、リンパ腺から身体中に転移していてもおかしくない。
ステージ3だろうな。
多分、外科手術で切除するのは、衰弱著しい彼の体力を考えると難しい。
投薬治療を行ったところで現時点では、助かる可能性は低いだろう。」
「分かりました。至急連絡をとるよう、事務員に伝えておきます。」
私は、不安を拭うこともできず、ほとんど眠れないまま翌日を迎えた。
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