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「大変長らくお待ちいただき、申し訳ありません。
完全な検査結果が出るのは、もう少し時間がかかりますが、現時点での結果をご両親様にお伝えします。」
「はあ…」
「申し上げにくいのですが、大変悪いという結論になりそうです。
白血球の数値もかなり低下しております。
最悪の事態も想定しておかなければなりません。」
「何の病気でしょうか?」
「癌です。既にステージ4に達していると思います。
癌の進行状況の中でも、最も重篤な状態と言えます。
増殖した癌細胞がリンパ節に転移し、更に増殖。
そこから、リンパ腺から身体中の臓器などに転移し、更に増殖している状態です。」
「手術などで治らないのでしょうか?」
「こればかりは何とも……
私の技術でもステージ2ぐらいの癌しか手術で除去できません。
ステージ3まで行くと、どこに癌細胞が転移するかわからない上、少しでも見逃せばすぐに再発するので、抗癌剤治療が主な治療になります。
しかし、ステージ4まで行くと……」
医者は少し口ごもった。
「どうするのですか?」
「抗癌剤自体が、身体にとってかなり危険な薬品なのです。
使用には細心の注意が必要で、時間もお金もかかります。
しかし、それでも亡くなる方はおられるのです。
治療を受けても癌で亡くなる方の半数近くは、癌そのものに冒されてではなく、抗癌剤の副作用により亡くなるのです。
この状態では、下手に治療しようとすると、却って死期を早めてしまうでしょう。」
両親はあまりの事に動転したのか、しばらくポカンとしていたが、やがて事態を理解し、その場に泣き崩れた。
「あんまりだ……あんまりだよ……
息子は………まだ……30歳にもなっていないのに……」
「お気の毒ですが、事実です。
若いからこそ、身体の細胞が活発で、その為、癌細胞の増殖も活発になるのです。」
「なんとか………なんとか……してやってくれないか………だって、アイツは、儂の半分も生きてないんですよ………」
「申し訳ありません。
我々にも、できることとできないことがあります。
私は神様ではないのです。
せめて二年、いや一年でも早く病院に来ていただければ、まだ手の施しようがあったのですが……」
「あんまりだ………」
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