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「今の時点で私が伝えられることは以上です。
いずれ……
検査の結果が判明し次第ですが、患者様本人に真実を伝えなくてはなりません。
事態は一刻を争う以上、少しでも早い方がいい。
明日の回診の時に伝えるつもりです。
しかし、本人のショックはかなり大きなものになるでしょう。
かなり取り乱すことが予想されます。
場合によっては、自暴自棄になるかもしれません。
そこで、まずあなた方の了承を得た上で、本人が取り乱すことが無いよう、ご両親様立ち会いの元、ご本人様に真実をお伝え致します。
病名は末期の癌であること、もはや治療の施しようが無いこと、病院側ができるのは投薬による苦痛の緩和ぐらいであること、などです……」
両親はお互い抱き合って泣き出した。
抱き合ったのは、お互い不安だったのか、それとも抱き合わないとお互い支えられないからか……
おそらく、両方なのだろう……
「なんとか……なんとか……
ううう……
うあああ~ん!」
「え、ぇぇ延命、治療も無理です……の?」
「延命治療をしたところで、癌が治るわけではないのですよ…
ただ無理やり心臓を動かし、死んでもいないが、生きてもいない状態になるだけです。
あなた方はスパゲティシンドロームという言葉をご存知ですか?」
「な、な、何の、こと、です……か、?」
「様々なチューブや計器のケーブル、カテーテルなどが身体中に絡みつき、様々な機械により生き長らえている患者を指す言葉です。
チューブやカテーテルがまるでスパゲティのように見えることから、そう呼ばれています。
このような状態になると、機械を止めた時がご臨終となる為、医者も家族にも相当の負担になります。
金銭的な話をすると、かかる費用は1日あたり最低でも10万円はかかるでしょう。
保険の適用にも限界がありますので、そこまでするべきかの判断は、ご家族様に委ねるしかありません。
私個人の意見として言わせていただければ、このような状態で生き長らえるのは本人にとっても苦痛を増すだけになるので敢えて勧めることは出来ませんが……」
「……」
「…ねぇ……アナタ、どうするの……?」
「…儂らの懐事情はお前の方がよくわかっているだろう……」
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