胎動

9/18
前へ
/18ページ
次へ
「………」 「………」 「いかが致しましょう?」 「……情けない話です……が、儂らもそれだけ余裕がある訳ではありません……… 息子も、無意味に延命することは望まないでしょう。 延命治療はお断りさせていただきます………」 両親の顔は悲しみでくしゃくしゃになっていた。 「ご英断と判断します。 患者様のまるでスパゲティモンスターのような姿にしてまで無理やり生かすのは、生命に対する冒涜だと、私は思っておりますので……」 「あと、先生の見立てでは、息子の余命はどれくらいでしょうか?」 「現時点での私の見立てでは、おそらくは長くても二週間。 場合によっては、もっと短くなるかもしれません。 患者本人の体力もかなり減少しておりますから、ここからは気力の勝負です。」 「今、息子に会えるでしょうか?」 医者は時計を見た。 「面会時間は過ぎてますが、なんとかしましょう。 しかし、今は患者様は痛み止めの麻酔で眠っているかもしれません。 会っても何もできないでしょうが……」 「構いません。とりあえず、顔が見たいのです。」 「わかりました。 息子さんはA病棟の七階、703号室に居ます。 四人部屋ですが、同室の方が今日退院されたので、今は病室に一人のはずです。」 「ありがとうございます」 そう言うと、夫婦は診察室を出ていった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加