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2050年、人類は仮想空間に意識を自在に移すバーチャル技術を確立していた。その技術が娯楽であるゲームに採用されるのは自然の流れであった。
数多くのVRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)が誕生する中、VRMMOの先駆者であるOG社から最新作『フロンティア・デイズ』のβ版が配信される。
OG社はフロンティア・デイズの情報を秘匿してβテスターを募った。
唯一の情報は今までのゲームと違い、ヒットポイントやステータスの数値をある程度撤廃したゲームらしいと。
それがゲーマたちや一般の人に興味を持たれ、一万通の応募があったようだ。
選ばれたのは4500人。
その中の一人に男子高校生、進藤 歩の名前があった。
進藤は何の疑いもなく、β版開始日にフロンティア・デイズへログイン。
これが現実と今生の別れになるかも知れないなど思ってもなかっただろう。
そして、プレイヤーネーム、シンドー(進藤 歩)はフロンティア・デイズのチュートリアル、カサゴ村に降り立った。
「チュートリアルの村だから全体的に地味だな」
シンドーが見渡すと、木造のログハウスが所々並ぶ、のどかな田舎だった。 特徴的な所がなく、村の畑や外に森や山が見えるだけの殺風景な村。
チュートリアルでは50人*90を村に振り分けて行うらしい。今も、プレイヤーらしき安っぽい皮装備をした人が何にもいる。
シンドーも同じである。最初の職業選択で剣士を選んだため、腰には60cmの切れ味の悪そうなウッドソード。他の人は杖や斧、槍など職業によって違う。
VRMMO内でのアバター(姿)はβ版ではまだ未実装で、全員がリアルの姿である。シンドーは黒の短髪に利発そうな顔つきだが、中身は普通の高校生。特技はサッカーなので足には自信があるが、仮想世界に現実の肉体レベルは関係ない。好きな言葉はボーナス、特典、サービス。
「チュートリアル行う前にステータスだけ確認しとくか。ヘルプもついでに見たいし」
思考コマンドでメニュー画面を開き、手動操作で選択していく。
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