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○修学旅行に出掛けた高校生たちの一幕
「ぶっ!!」
顔に衝撃。まさしく不意打ちの勢いに仰け反った私の顔は酷く間抜けに映ったに違いない。
「はっははは、何だその顔!」
「もう一回!」
枕を拾い上げ、目一杯溜めて目掛けた一撃は私の意思とは裏腹に無情にも明後日の方向へ飛んでいった。
「隙あり!」「きゃーーっ」
――やられる!
思わず身構えた私の顔にぽふん、と間抜けな音と空気が萎む感触が伝わった。
負けだ、完敗だ、10戦10敗。完璧なる討ち死に。
きゅっときつく閉じていた瞼をそろりと開いた視界にしたり顔で仁王立ちした親友の姿がくっきりと浮かび上がった。
終わった、私の秘密。
ずっとずっと宝箱に鍵をかけ、ひた隠しにしてきた心の拠り所は眼前のパイレーツに突き出され、今この瞬間にも白日の下に晒されようとしている。
「で、誰なの、あさひちゃん?
もう言い逃れは出来ないからな。
1戦だったものを10戦もやり直ししたんだから。
さあ、白状してもらうよ」
恋バナというものは、あくまで相談者が楽しんで初めてワイワイ賑やかにお喋りするのであって、断頭台に乗せられた罪人のようにうなだれる私に無理矢理聞き出すようなものであっていいはずがないと思うんだ、そう、思うんだよ。
さも楽しそうに唇を舐めるドSな親友に肘鉄をかますことが出来ればどんなにいいだろう。
ああ、言えるわけがない、言えるわけがないんだ、そんなこと。
私はじっと親友を見つめる。
水泳で色素が抜けてく茶の髪に陽灼けした浅黒の肌。整えられたおしゃれ眉の下には、猫のようなきつめのダークブラウンが狙いをすましたように光っている。就寝前だからと無防備極まりないシャツは第二ボタンまで外され、締まった肢体が覗いている。
「さあ、あさひ。
きちんと言ってくれればそれでいいんだぞ。早く楽になっちまえよ」
「う、ううううーーっ!」
握りこぶしをぎゅっときつくして唸った――張本人を前にして。
「枕投げしようって言ったのはあさひだぞ。
約束は約束、さあ!」
詰め寄ってくる親友を好きだなんて言えるわけがない。そういうパターンは、口に出したが最後、玉砕のパターンだ。
ましてや、それが本人にダイレクトなんて拷問もいいところだ。
普段GLな私が生粋のBLのあんたに恋した、それは果たしてノーマルなんだ……ろうか。
End
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