第九章 広がる狂気

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「礼奈ーー! 礼奈ーーーーーー!」 光が一切差さない、暗い森の中。 啓太の声が空しく響き渡る。 「クソッ!」 目を凝らして辺りを必死に見回すが、何も見えない。 「暗くて何も見えねぇんだよ、畜生!」 博を振り切り森の中に飛び込んだはいいが、勢いのまま何の準備もしていなかった為、今の啓太の手元には明かりとなる物が何も無かった。 その為、月明かりすら遮る深い森の中を、ほぼ手探りで探索するしかない。 「くっそ、せめて携帯電話でもあれば少しは違ったのに」 いつもなら持ち歩いている携帯電話だが、今は電波が通じないからと鞄の中に仕舞い込んでしまっている。 そんな時だった。
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