第九章 広がる狂気

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礼奈は餌だったのだ。 「離せっ、クソッ!」 正義感に溢れた、愚かな獲物を呼び寄せる為の。 「おわっ!?」 怪物は、啓太を持ち上げた状態で、啓太の片方の足首を持つと、今まで掴んでいた髪の毛を手放した。 「うぉ!? くそっ、おいっ!」 逆さ吊りの体勢でもがく啓太。 「離っ……せ……?」 そして、そこで改めて相手の姿をしっかりと確認し、 「何だ……これ?」 恐怖する。 背筋に寒気が走り、体が震えだす。 「うわぁぁぁあああ!!!!」 バタバタと出鱈目に手足を振り回し、更に激しくもがきだす啓太。 別荘で初めて見た時は、一瞬でよく見えなかった。 襲われた時は後ろからで、姿が見えなかった。 「ああああああああああ!!!!!! ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 啓太はこの時初めて、怪物の姿をしっかりと視認したのだ。
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