第九章 広がる狂気

9/39
前へ
/39ページ
次へ
「んガッ!」 啓太の拳が、博の頬を打ち抜く。 「んな!? て、てめぇ」 「逃げるんだったら一人で逃げろ。俺はアイツを助けに行く」 啓太が博を強く睨みつける。 「ば、馬鹿じゃねぇの!? あんなんどう見たって、」 「わかってるよ」 啓太が表情をゆるめる。 「けど、……友達だろ?」 「!? ………………」 博が俯く。 「俺はアイツを助けに行くから、お前は誰か人を呼んできてくれ。…………じゃあな」 それだけ告げると、啓太は一人暗い森の中に入って行った。 「………………何だよ、それ」 博が悲しそうな表情で呟く。 「格好つけてんじゃねぇよ。馬鹿じゃねぇの……」 小さな声で、もう一度呟く。 「馬鹿じゃねぇの……」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加