邂逅

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****** 「やっと……」 じわじわと蝉が鳴きわめく中―― 「やっと着いたでちぃぃぃ!!」 一人の老人が絶叫する。 横を通りすぎようとしていた、妙齢の女性がびくぅぅ!!と飛び上がった。 「長かった……。大変だったでち。年寄りには心底堪えた登り坂だったでち!!」 感嘆の声を上げる老人を妙齢の女性はチラッとだけ見て、そそくさとその場から離れようとした。 その表情はこう言っていた―― 『関わりたくない』 それはそうだろう――。 老人の姿は異様そのものだったからだ。 ツルっと禿げ上がった頭に冷えぴたシートを三枚くっ付け、タオルをほっかむりしている。 夏物の開襟シャツにスラックス。 そしてなぜか―― 背中にはヒヨコの形をしたリュックサック。 異様な風姿をした老人がぶつぶつと呟く。 「全く……初代といい、二代目といい……なんも考えてないのが丸わかりでち。本当に毒婦マチルダという女は困ったちゃんなやつでち!!」
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