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「やっと……」
じわじわと蝉が鳴きわめく中――
「やっと着いたでちぃぃぃ!!」
一人の老人が絶叫する。
横を通りすぎようとしていた、妙齢の女性がびくぅぅ!!と飛び上がった。
「長かった……。大変だったでち。年寄りには心底堪えた登り坂だったでち!!」
感嘆の声を上げる老人を妙齢の女性はチラッとだけ見て、そそくさとその場から離れようとした。
その表情はこう言っていた――
『関わりたくない』
それはそうだろう――。
老人の姿は異様そのものだったからだ。
ツルっと禿げ上がった頭に冷えぴたシートを三枚くっ付け、タオルをほっかむりしている。
夏物の開襟シャツにスラックス。
そしてなぜか――
背中にはヒヨコの形をしたリュックサック。
異様な風姿をした老人がぶつぶつと呟く。
「全く……初代といい、二代目といい……なんも考えてないのが丸わかりでち。本当に毒婦マチルダという女は困ったちゃんなやつでち!!」
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