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明るく笑いながら、手を振る老人――。
自らを『やっくん』と呼んだこの男の正体は――
かつて『瑞月八雲』と名乗り、政府の言論統制に抵抗し戦った男――。
伝説の死の天使アズラエルと呼ばれ、恐れられた男『一ノ瀬八雲』
そして、彼が墓碑に呼び掛けている『マッチー』というのは――
ノートリックス総帥光姫琥太郎と共に、粛清から多くのクリエイターを救ったと言われている――毒婦マチルダのことである。
「マッチー、あのさ、来てそうそう言いたくないんだけど、あんたが寝てるこの場所。年寄りには厳しすぎるから!!」
すびしっ!!と墓碑に指を指し、八雲はヒヨコリュックを下におろした。
「ま、ま、そんなことはさておき。マッチー、これ好きだったよね」
「ジャジャーン」と言いながら、八雲はヒヨコリュックから小瓶を取り出す。
「日本酒!! それも久保田!! ま、ま、のみなはれ」
けらけらと笑いながら、八雲は墓碑の前に、小瓶を置いた。
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