邂逅

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風が八雲を包み込む。 そして、ふっと。 墓碑の前に座り込んでいる八雲の前に影ができ、一切の音が消え――静寂が辺りを支配した。 『――八雲さん』 懐かしい声――。 あわてて、顔を上げると。 「マッ……チー……?」 そこには……かつての、若かりし頃の毒婦マチルダが居た――。 墓石の上に脚を組んで座り、艶然と微笑んでいる。 長い黒髪。白い肌。 間違いなく――往年の頃の毒婦マチルダ。 『てか、来るのが遅い!!』 「え?」 マチルダがクスクスと笑う。 『八雲さん、劇団を見つけるのも遅かったよね? オニクちゃん言ってたもん。“あれじゃ、お禿げさん、モテないはずだよ”って』 「ちょっ!! そんなこと言ってたの!?」 『うん』 「ひどっ!!」 それを見て、マチルダが楽しそうに笑う。 『……ねぇ、八雲さん』 「ん?」 『名前。“瑞月八雲”に戻さないの?』 いきなりの質問に八雲が返答に詰まる。
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