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『アタシね、今だから言うけど……瑞月八雲って名前、結構好きだったのよね』
楽しそうに笑いながら、マチルダは八雲に語りかける。
『そうだ、二代目は瑞月八雲を名乗らせなよ? うん、そうしなよ』
「ちょっ!! また勝手なことばっかり……」
マチルダがあははと笑った。
そうして一瞬の静寂が辺りを支配した後。
『アメイジング・グレイス』
「え?」
『聞こえてきてる……。アメイジング・グレイス……』
優しい声で彼女が囁く。
『どんなにね……時代が悪い方向に流れても……伝わるものは伝わるんだよね……。アタシ達ができなくても……想いを継いだ子供たちが……きっと変えていく。そう……信じてる』
「マッチー……」
再び、マチルダが明るく笑う。
そうして――。
『ゴメンね、八雲さん。時間……来ちゃった。もう……行くね?』
マチルダがゆっくりと立ち上がり――
『じゃあね。あっちで待ってるから。会いにきてくれて……ありがとう』
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