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瞬間、うるさいぐらいの蝉の声が辺りを包む。
炙られるような熱が戻ってきた。
白昼夢――。
そう思った八雲の手の上に何かがあった。
真っ白な――一枚の羽。
羽を見ながら、八雲がクスッと笑う。
「マッチー……。君ってやつは……来る時もいきなりなら、帰る時もいきなりなんだから……」
ポタリ。
羽の上に雫が落ちる。
「……あれ?」
笑いながら……八雲が自分の頬に手をあてる。
ポタリ、ポタリと。
八雲の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「マッチー……」
八雲が嗚咽を上げだした。
「マッチぃぃ!! マッチぃぃ!! ああああ!! うわぁぁぁ!! 何で!! 何でだよぉぉ!! うわぁぁぁ!!」
墓標の前で。
かつて、死の天使と呼ばれ、恐れられた男は――子供のように泣きじゃくる。
「何で!! 何で先に逝っちゃったのさ!! 何でぇぇ!! ああああ!!」
アメイジング・グレイスが――風に乗って、八雲を包み込む。
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