序章

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朔也は元貴族でもなんでもない。家柄を重視する魔術師学園で普通の人間が最強と呼ばれている。これで嫌な目で見られないわけがない。 けれど、それ以上に朔也が嫌われるのには理由があった。 (やっぱり俺の目と、この性格がいけないんだろうなあ) 朔也は自分が嫌われる理由を2つ挙げ、そう出来るだけ客観的に分析する。 朝霧朔也の瞳の色は深い闇を思わせるような、澄んだ綺麗な黒。 そう。黒なのだ。 人々が魔術の素養によって様々な色の瞳をしているこの世界では、朔也と同じ黒い瞳を持つ人はとても珍しい。それだけ黒は特別な色。 そして、黒い目は呪われた色として昔から忌み嫌われるものでもあった。けれど、人々の多様性を認めている現在の日本では、瞳の色の違いによって人を差別してはいけないと教育されている。 勿論それは未来を担う若人にしっかりと刷り込まれていた。 いや。そもそも、黒い瞳の持ち主など今ではほとんど見ることができないのだ。そのため、特に若者は黒い瞳を嫌悪するという感覚すら持ち合わせていなかった。黒い瞳の人間など忌み嫌う以前に、出会うことすらない、もはや空想の産物と同義と言ってもいいだろう。 つまり何が言いたいのかというと、朔也が嫌われるのは黒い瞳が直接の原因なのではない。
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